精油を使うときにどのように選ぶか、それはいろいろな視点から考えることができます。精油選びの1つの視点として、今回は少しマニアックに「精油の化学成分」について簡単に紹介したいと思います。
私は、アロマテラピーを勉強するまでは、単に香りの好みで精油を選んでいました。しかし、勉強をしていくうちに、香りそのものはもちろんのこと、精油の素となっている植物のこと、精油の身体面や心理面へ影響など、精油には実に多くの側面があることを知るようになりました。
香りには肉眼で見える形はありません。芳香浴をしても香りが漂っている様はわかりません。それでも、ヒトは嗅覚で香りを感じることができます。目には見えなくても感じる香り、それは植物の持つ化学成分です。精油は、主に炭素・水素・酸素から成る膨大な数と種類の化学成分が集まってできています。香りは、精油に含まれる化学成分の種類、割合、化学成分そのものの持つ特徴によって異なります。
精油をカレー粉に、精油の化学成分をスパイスに例えてみましょう。ご存じのとおり、カレー粉はさまざまなスパイスを調合したもの。スパイスの種類や配合は作り手ごとに違います。たとえばAというカレー粉には、クミン、レッドペッパー、ブラックペッパー、ターメリック、カルダモン、コリアンダー。別のBというカレー粉には、クミン、レッドペッパー、フェネグリーク、ターメリック、クローブといった具合です。AとBは違う香りのカレー粉になりますし、もしAとBが同じスパイスを使っていたとしても、配合によって香りも変わります。
話を精油に戻すと、香りを構成する化学成分にはそれぞれ特性があります。この化学成分の特性を精油選びの1つの視点とすると、アロマテラピーの活用の幅が広がります。具体的に、レモンの精油に含まれる「リモネン」について挙げてみます。
リモネンは、レモンの精油に一番多く含まれている化学成分です。レモンの香りは、このほかにβ-ピネン、γ-ターピネン、α-ピネン、ミルセンなど、いろいろな化学成分で構成されています。
リモネンは、ほとんどの精油に多かれ少なかれ含まれていますが、特に柑橘類の精油で多くの割合を占め、独特のシトラスの香りを出します。また、揮発性が高い性質があるため、ほかの成分の香りを揮発させる牽引役でもあります。そのため、香水のトップノート(香水を付けると一番最初に感じる香り)として使われます。こうした特性を知っていることで、ベチバーやパチュリなどのベースノート(一番最後まで残る、重い印象の香り)の精油を空気中に引き連れて一緒に香らせるような役割として使うことができます。
また、リモネンには酸化によって皮膚刺激を引き起こす性質もあるため、酸化を防ぐため冷暗保存を徹底したり、早めに使い切るといったことも精油の管理上の知識として役立つでしょう。
さて、精油の香りを構成する化学成分には、ほかにもおもしろいことがあります。
1つは、香りを特徴づける化学成分が必ずしも一番多く含まれているわけではないということです。たとえば、グレープフルーツの精油に含まれる「ヌートカトン」という成分がそうです。この成分はグレープフルーツらしい少し苦みのある香りを醸し出しますが、含まれているのは精油全体の1%以下という微量です。
もう1つは、いわゆる悪臭の素になる成分も「いい香り」を演出していることです。たとえば、「香りの女王」といわれるローズ・オットーには、微量の硫黄化合物が含まれています。硫黄の温泉はあまりいい臭いではありませんが、そういう臭いの素もまるで料理の隠し味のような役割を果たし、精油の香りに複雑さを醸し出します。
化学成分というと小難しく感じるかもしれませんが、精油の特性の1つとして捉えれば、また違った精油選びができるようになるかもしれません。次回の記事では、これを踏まえて、精油の香りを使ったお遊び実験をしたいと思います。どうぞお楽しみに。
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