或る日の午後、うたた寝をしていて、成就しなかった恋愛の夢を見た。それは自分の中ではすでに終わったことで、納得していることなのに、潜在意識は当時傷ついた自分を憶えているのか、いたく悲しんでいた。悪かった寝起きを柿ピーを食べてチャラにした。

若い頃の恋愛のことでは私は傷だらけだった、と今も思う。
その古傷がたまに夢に出てきては痛むのだ。

しかし、異性に関しては全く別の懐かしい想い出がある。

それはいわゆる友達以上恋人未満というちょっぴり甘酸っぱい関係だった男友達が夢に出てくることである。

これは恋愛よりも懐かしく胸をギューっと掴まれて切なくなる。
男と女の関係でなく、どうしてそうならないのかも考えもせず、いつも一緒が当たり前だった。

はたから見れば恋人同士に見えただろうその関係は、不思議なものだった。

今は男女の関係にならなくてよかった、としみじみ思う。
人生のあるひととき、仲良くじゃれていたという想い出が宝物のように感じられるからだ。

その彼とは、私が田舎に戻って、結婚して…と、長い間連絡もとらなくなってしまったのだが、先日ふとしたことから連絡がとれた。
お互いの近況報告を長々とLINEでやりとりし、多くの時間が過ぎたことを知った。

複雑な家庭環境ゆえ、結婚できそうもなかった彼はちゃんと伴侶を見つけ、しっかり結婚していて、2人の娘さんを授かっていて、好きなことを生業にしていた。
それを知ってとても幸せな気分になった。

彼と私がそれぞれの場所で巣を作り、家族を守るために必死で生きている、そのことがなんとも嬉しかった。

最近、夢に昔の男遍歴が出てくることが多い。
これは欲求不満というよりも、私の頭の中で色々と記憶を整理しようという作用が働いているような気がする。

同時に自分の中の女性ホルモンが減ってきて、女であることの意味合いを自分の中で何かしら書き換えようとしているようだ。

つまり、私はもう異性に対してあまり興味もなく、必要以上に女であることをやめようとしているということ。

私はもう、胸を焼かれるような恋はしないだろう。
そういうことで振り回されることもないだろうと思う。

寂しいようだけれども、こうやって性別を超えて年を重ねていくのが私にとっての現実。

老いらくの恋なんてのも真っ平御免だ。