アロマテラピーの主役である精油。精油の種類によって、香りの特徴や作用は異なります。精油の特徴を知ることで、自分にとってベストな精油を選ぶことができます。今回は、精油の特徴を表す情報のお話です。

アロマテラピーの本の多くには、各精油のプロフィールが記載されています。主に、次のようなことが書かれています。

*一般名(一般的な名称)
*学名
*科名(素材となる植物の科名)
*抽出部位
*抽出方法
*主な産地
*香りの特徴
*精油に含まれる主な化学成分
*作用

◎ 学名

一般名だけでなく、学名が記されているのには理由があります。一般名は国や地域によって呼び名が異なりますが、学名は「二名法」と呼ばれる世界共通の表記法で記されます。これは、植物だけでなく自然界に存在する動物や鉱物などにも使われている表記法です。場所によって呼び方が違っても、学名を見ればどの精油なのかがわかるようになっているわけです。

◎ 科名

科名は、アレルギー症状を避けるために重要な情報です。植物には毒性のあるものもありますし、アレルギー反応を引き起こすものもあります。特にキク科は要注意です。植物で自然なものだから安全だと安易に考えずに、体質によっては使えない精油があることも知っておくとよいでしょう。

◎ 抽出部位

精油の成分は、植物全体ではなく、花、葉、根、種子、樹脂など部分的に蓄えられています。抽出部位とは、植物のどの部分から精油が抽出されているのかを示します。おもしろいのは、同じ植物でも抽出部位の違いによって別の精油となることです。たとえば、ビターオレンジの花から採れるのはネロリ、葉・小枝から採れるのはプチグレンです。香りも成分も異なるので、作用も変わってきます。

◎ 抽出方法

抽出方法は、精油をどのような方法で抽出するかを示します。主なものは、水蒸気蒸留法、圧搾法、溶剤抽出法です。かつては、ローズやジャスミンは油脂吸着法という方法で採取していましたが、手間ひまがかかりすぎるため、現在ではほとんど使われていません。

柑橘類は圧搾法で抽出します。圧搾機で果実を圧搾し、水分(果汁)と精油を遠心分離させます。柑橘の精油は果皮から採れます。レモンをぎゅっと絞ると手にうっすらと油が残りますが、それが香りの成分です。

油脂吸着法に取って代わったのが溶剤抽出法で、ローズ、ジャスミン、ベンゾインはこの方法で抽出します。有機溶剤の中に素材となる植物を漬けると、精油成分が溶剤に溶け出します。溶剤を気化させると「コンクリート」と呼ばれる固形物が残り、その中に含まれる精油成分をさらにアルコールで抽出します。この方法で採取されたローズとジャスミンの精油は「アブソリュート」と呼ばれます。ローズなら、ローズアブソリュート、ジャスミンならジャスミンアブソリュートです。

その他の多くは、水蒸気蒸留法という方法で抽出されます。水蒸気蒸留法は端的にいうと、大きな蒸し器に素材となる植物を入れて蒸して、芳香成分を含んだ水蒸気を冷却し、水と精油成分を分離して抽出する方法です。このときに、水にはわずかに芳香成分が残っています。この水を「芳香蒸留水」や「フローラルウォーター」といいます(アロマテラピー専門店で入手できます)。化粧水代わりとしてそのまま使えますし、石けんやクリーム作りの香り付けにも使えます。実は、古くは芳香蒸留水を作るのがメインで、その副産物が精油でした。

なお、ローズは先述の溶剤抽出法または水蒸気蒸留法で抽出します。水蒸気蒸留法で抽出したものをローズオットーといいます。ローズアブソリュートは濃厚なバラの香り、ローズオットーは透明感のあるバラの香りがするように思います。

また、柑橘類の多くは圧搾法で抽出しますが、なかには水蒸気蒸留法で抽出するものもあります。私は水蒸気蒸留法で抽出したユズの精油を持っていますが、圧搾法に比べて香りがやさしくマイルドな印象です。このように、同じ素材でも抽出方法によって香りが変わるのもおもしろいです。

◎ 産地

産地は精油のラベルやパッケージなどにも書かれています。植物ですから、育成環境が違うと同じ精油でも成分や香りが異なります。また、質のよい精油が採れる産地を知っておくのも、精油選びに役立つでしょう。食べ物を選ぶのと同じ感覚ですね。

◎ 作用、化学成分、香りの特徴

精油の香りは精神面へ作用します。たとえば、ローズの華麗な花の香りは高揚感にあふれ、特に女性には幸福感を与えるといわれています。身体面への作用は、主に化学成分によるところが大きく、たとえばペパーミントにはスーッとした香りを演出するl-メントール(エルメントール)という成分が含まれています。この成分には冷却作用と加温作用という相反する作用があります。肩こりや筋肉疲労などに用いると、ひんやりとした清涼感のあとにポカポカと温まります。

精油ごとにこうした作用があるので、そのときのニーズにあったものを使用することが大切です。アロマテラピーで期待できる作用はいろいろとあります。主な作用については次回紹介したいと思います。

香りの特徴に関しては、本に書かれていることは1つの表現でしかないと思います。香りの感じ方は人それぞれで一様ではありません。大切なのは、自分がどのように感じるか。その瞬間に感じたことは自分の一番素直な感覚なので、特にファーストインプレッションが大切です。また、たとえ「リラックス作用がある」といわれる精油だとしても、それが自分の苦手な香りだったら、まったくリラックスできないと思います。ですから、作用や香りの表現の能書きだけでなく、自分でその香りを嗅いでみてから選ぶようにしましょう。

さて、ここまでは精油の特徴を知るための情報について説明しました。今回はこれをもとに、ラベンダーのプロフィールを見ていきます。

◎ ラベンダーのプロフィール

一般名 ラベンダー
学名 Lavandula angustifolia, Lavandula officinalis, Lavandula vera
科名 シソ科
抽出部位 花、葉
抽出方法 水蒸気蒸留法
主な産地 フランス、地中海地方、ブルガリア、オーストラリア
香りの特徴 やさしくフローラルな中に少し青みがかった香り
主な化学成分 リナロール、酢酸リナリル、ラバンジュロール
作用 鎮静、抗うつ、強壮、刺激、殺菌、消毒、抗菌、抗ウイルス、鎮痛、細胞成長促進、抗炎症など

※化学成分と作用は代表的なものだけ記載しています。

ラベンダーのリラックス作用はあまりにも有名です。特に、芳香浴はリラクゼーションにオススメです。私はほぼ毎晩、就寝時に芳香浴をしています。就寝時の芳香浴では、香りを感じるか感じないかくらいのうっすらとした濃度にするのが好きです。ただ、ラベンダーの香りが苦手という人も意外と多いのです。残念ながら、そういう人にはリラックス効果は期待できないですね。。

ラベンダーの一番の魅力は、安全性が高く万能選手であることです。ここには書き切れないくらいの作用がありますが、私が実感したのは鎮痛作用です。肩から背中にかけての疲労でよく眠れなかったときに、ちょっと掟破りですが2%濃度のローションを作って、痛みのある部分と顔にスプレーしたところ、香りのおかげで気持ちがふんわりと軽くなってよく眠れました。痛みには速効で効くというわけではありませんでしたが、間違いなく改善はしました。「痛みで眠れない、眠れないから回復しない」という悪循環を断ち切ることができ、緊張性の疲労にはラベンダーがいいな、と感じました。

そんな万能選手のラベンダーは、旅先に1本持って行くといろいろと便利だと思います。部屋の消臭、アロマバス、虫刺されのときなど使い途が豊富です。

それでは最後に、簡単ですぐにでもできるオススメの使い方を紹介します。

◎ 就寝時の芳香浴

アロマランプやディフューザーにラベンダー精油を3滴ほど垂らします。オレンジスイートとのブレンドも安眠によいといわれています。
タイマー付きのディフューザーだとそのまま眠ってしまっても安心です。アロマランプの場合は電気の消し忘れに注意してください。

◎ バスソルト

大さじ2杯の天然塩にラベンダーを5滴加えて軽く混ぜます。心身ともにほぐれていく感覚を味わいながらバスタブにゆっくり浸かれば、ぐっすり眠れて翌日に疲れを持ち越しません。コリをほぐすスイートマージョラムをブレンドするのもオススメです。

◎ アロマスプレー

どこでも使える便利なスプレーです。無水エタノール5ml、ラベンダー5滴、精製水20mlをスプレーボトルに入れて振るだけでできあがり。消臭、持ち歩きの芳香浴など、使い途はたくさんあります。