アロマテラピーを実践していくうちに、ハーブ(薬草、香草)と出会う方も多いことでしょう。私も、アロマテラピーの勉強をしていく中でハーブを使ったさまざまなクラフトを作り、ハーブのすばらしさと精油との相乗効果を実感した一人です。
「ハーブ」と呼ぶといかにも西洋のものというイメージですが、古くから病を癒やすために世界中で利用されてきました。私たちが今も生姜湯を飲んだり、ゆず湯に入ったりするのは、歴史の中で得てきた薬草の利用方法といえるでしょう。普段から当たり前に飲んでいる緑茶も、抗菌作用を持つ立派なハーブの1つです。
ハーブのよさは、精油に比べると体への刺激がマイルドなことです。逆に言えば医薬品のような即効性はありませんが、だからこそ生活の中に取り入れやすく、無理なく健康の維持・促進に役立てることができます。
ハーブティーを飲む習慣が始まったのは1年ほど前。しばらくすると、体の中の細胞が入れ替わったような感覚がありました。今では毎朝、自分でブレンドしたハーブティーを飲んでいます。ビタミンCが豊富なローズヒップと、ローズヒップと相性がよいハイビスカスをベースにして、その日の体調に合わせて数種類プラスしたブレンドが定番です。また、食後には消化を助けるペパーミントとレモンバームのブレンド、仕事中にはレモングラス、ローズヒップとハイビスカス、夜にはカモミールとリンデンのリラックス系ブレンドなど、そのときどきの気分や体調に合わせています。
アロマのバスソルトを作るときと同じことなのですが、「自分でハーブをブレンドする」というのが、私にとって大切な健康管理方法になっています。特に、朝は「胃の調子がいまいち」「なんとなく体がだるい」「頭がスッキリとしない」など、その日の状態を把握するきっかけになっています。そしてハーブティーを飲みながら、頭、心、体をととのえて、1日のスタートを切るための準備をします。アロマやハーブは、自分の心身の状態を映し出す鏡だと捉えています。
さて、ハーブはお茶や料理だけでなく、外用としても使うことができます。たとえば、ローション、パック、入浴剤、軟膏など、活用できる場面は意外と多いのです。その1つが今回紹介するハンドクリームの材料である「浸出油(インフューズドオイル)」です。
浸出油は、植物性油脂にハーブを漬け込んで、ハーブの脂溶性成分を抽出したオイルです。抽出された成分には、ハーブの種類によって抗酸化や抗炎症などのさまざまな作用があります。浸出油を作る方法には、湯煎で加熱しながらハーブの成分を抽出する「温浸法(マセレイテッド)」と、常温で抽出する「冷浸法(アンフルラージュ)」があります。どちらの方法が適しているかは、ハーブの種類によって異なります。
この浸出油、実はとてもお得な一品です。たとえば、ローズの精油はとても高価なのでアロマテラピーを始めたばかりの方には手が出しにくいと思いますが、ハーブティー用のローズを使った浸出油は気軽に作ることができます。精油のような華麗さはありませんが、ハーブならではの甘くて香ばしい香りになります。スキンケアによいローズオイルをたっぷりと使えるのはうれしいです。
今回は、浸出油をベースにしたハンドクリームを作ります。浸出油は、皮膚や粘膜を守る作用のあるカレンデュラを使って、冷浸法で作ります(ローズの場合は温浸法が向いています)。これをベースにミツロウクリームを作りますが、精油と一緒に使うことで相乗効果が期待できます。精油は、スキンケアによいカモミール・ローマンを使います。クリームではなく、カレンデュラオイルに精油を加えてトリートメントオイルとして使うこともできます。
カレンデュラオイルのレシピ
マカデミアナッツ油 | 100ml |
カレンデュラ(ハーブティー用) | 10g |
透明で広口のガラス瓶 | |
コーヒーフィルター | 1枚 |
遮光瓶 |
※ガラス瓶と遮光瓶は、アルコール消毒または煮沸消毒しておく
① ガラス瓶にカレンデュラを入れ、カレンデュラが覆われるようにマカデミアナッツ油を注ぎます。ハーブを完全に浸さないとうまくできませんので、100mlで足りなければハーブが覆うくらいまで注ぎ足します。
② フタをしっかりと閉め、瓶を軽く振ってハーブにオイルが行き渡るようにします。
③ 日光の当たる場所に2週間置き、1日1回、瓶を軽く振ります。漬け終わりの日付を記載した付箋を瓶に貼り付けておくと忘れず便利です。
④ 2週間後、コーヒーフィルターで漉します(最後は絞ります)。
⑤ 遮光瓶に入れて保存します。作成日付をラベルに書いて瓶に貼り、冷暗所で保存します。雑菌が入らないように注意し、3ヶ月くらいで使い切りましょう。
ハンドクリームのレシピ
カレンデュラオイル | 20ml |
ミツロウ | 5g |
ハチミツ | 豆さじ1 |
精油(カモミール・ローマン) | 3滴 |
容量30mlの容器 |
① カレンデュラオイルとミツロウをビーカーに入れて湯煎にかけます。
② ミツロウが溶けてきたら竹串などで混ぜ、完全に液体状になるまで溶かします。
③ 湯煎から外し、オイルが固まらないうちにハチミツ加えてよく混ぜます。
④ オイルが固まらないうちに容器に流して精油を加え、まわりが固まってくるまで混ぜます。
ポイント
ハーブは、ポプリやクラフト用のものではなく、ハーブティー用のものを使用します。アロマテラピーの専門店で20gくらいから購入できます。
オイルとハーブの割合は、10:1を目安にするとよいでしょう。
ハチミツは、ダマになったり沈殿したりしないように、完全に溶けるまでよく混ぜます。
カレンデュラのプロフィール
キク科。学名「Calendura officinalis」の「officinalis」には薬用の意味があり、古くから薬草として用いられてきました。皮膚炎にカレンデュラオイルのクリームは大定番です。ハーブティーは粘膜の修復に役立ちます。別名はポットマリーゴールド、マリーゴールド。園芸用のマリーゴールドは別の品種なので気をつけてください。
ハーブの利用に関する注意
ハーブは精油に比べると作用がマイルドですが、種類によっては禁忌があります。妊娠中、授乳中、病気の治療中、医薬品を服用中の場合は、医療従事者に相談のうえ、利用することをおすすめします。