今回のテーマは「芳香蒸留水」です。このテーマでコラムを書くにあたり、芳香蒸留水についての資料をいろいろと読みました。すると、最初に考えていたよりもずっと奥深い(?)ものだということがわかりました。というわけで、今回と次回のテーマは芳香蒸留水です。

芳香蒸留水は、水蒸気蒸留法で精油を採るときに一緒に出来る、香りのある水です。水蒸気蒸留法とは精油の採取方法の1つです。非常に大雑把にいうと、原材料の植物を釜の中で蒸して、そのときに出てきた水蒸気を冷却することで得られる液体から分離して精油を採取する方法です。この方法で精油を取り出したときに残った液体が芳香蒸留水です。

特徴は、成分が高濃度に凝縮されている精油と比べるとマイルドな使い心地であることです。皮膚や粘膜への刺激があって使えない精油の代わりに利用できて便利です。精油のように希釈する必要がなく、そのままローションやヘアトニックとして使うことができます。また、クレイパックを作るときの水分として利用できます。アロマテラピーは精油だけではなく、芳香蒸留水を使っても楽しむことができるのです。

芳香蒸留水はアロマテラピー専門店で売られています。インターネットのアロマテラピー専門店でも扱ってはいますが、初めて芳香蒸留水を買うときは自分で実物を確かめるほうがよいでしょう。買うときのポイントは次のとおりです。

(1)香り
芳香蒸留水は、「精油とはまったく違う香り」というものがほとんどです。精油をうす〜くした香りだというイメージでいると、そのギャップに驚かされます。私の経験では、ラベンダーにはがっかりさせられました。そうしたなかで、ローズとネロリは精油に近い香りがするほうだと思います。
また、たとえ同じ原料であっても、製造元によって香りが違うこともよくあります。実際に匂いを嗅いで確かめるようにしましょう。

(2)品質の劣化
芳香蒸留水は水分が中心なので、雑菌が繁殖しやすく、酸化や加水分解による反応で品質の劣化が起こりやすいことにも留意しましょう。品質管理が行き届いていない芳香蒸留水は、不快な臭いがします。購入後は、開封していなくても冷蔵庫で保管しましょう。

(3)名称
芳香蒸留水は、「ハイドロゾル」「フローラルウォーター」「フラワーウォーター」「アクアローム」とも呼ばれています。一方、「アロマウォーター」と呼ばれているものは芳香蒸留水ではありません。名称に惑わされないように注意しましょう。

(4)成分
フローラルウォーターという名前が付いた商品でも、防腐剤が入っているものがあります。品質保持のために使われているものですが、天然成分だけの芳香蒸留水を求める場合は表示成分をよく確認しましょう。純粋な芳香蒸留水は、たとえばローズであれば「ダマスクローズ花水」「オレンジフラワー花水」のように、植物の名前と使用部位がわかる形で表記されています。

ときどき、「芳香蒸留水は飲用できる」と記述しているアロマテラピーの本がありますが、上に挙げたようなことを考えると、少なくとも私は飲用しないほうがいいと思います。

自分に合った製品を見つけるまでが案外難しいかもしれませんが、精油よりも禁忌が少なく作用が穏やかなことはメリットです。また、ローズ、ネロリ(オレンジフラワー)、リンデン、カモミールなどは、精油だと高価なので気軽に使うのをためらいますが、芳香蒸留水であればたっぷりと使えます。

では、芳香蒸留水を使ったレシピをご紹介します。

◎ 足浴

足が蒸れたときは、ペパーミントの芳香蒸留水で足浴するとスッキリとします。普通にお湯で足浴するよりも、足のスッキリ感が違います。
洗面器に適温のお湯を張り、芳香蒸留水を30〜50ml加えます。一度に大量に入れると、芳香蒸留水とはいえペパーミントの刺激が強く感じることもあります。また、お湯に混ぜることで香り成分が揮発するので、香りの強さによって気分が悪くならないように調節しながら入れてください。

◎ シートパック

シートパック用のマスクに含ませるだけの簡単パックです。顔に載せるので、香りのよい芳香蒸留水を使うのがポイントです。ローズ、オレンジフラワーがオススメです。精油とはまた違ったほんのりとした香りで気持ちよくパックできますよ。

◎ クレイパック

いわゆる泥パックに使う「クレイ」に芳香蒸留水を加えてパックします。これもローズ、オレンジフラワーがオススメです。クレイパックをすると、肌の色が明るくなり、そしてすべすべとした感触になります。
小さじ1〜2杯のクレイ(モンモリロナイト、カオリンなど)に芳香蒸留水を少しずつ加え、歯磨き粉くらいの柔らかさになるまでのばします。クレイの量は、使う部位に応じて調整してください。顔だけなら小さじ1くらいを目安に。顔に塗ったら5分ほど置いて、乾ききる前に洗い流します。

こんな感じのテクスチャーで。

こんな感じのテクスチャーで。

なお、作り置きはできないので、必ず使い切ってください。

そのほか、リネンウォーターとして、手作り石けんの水分としてなど、使い途はいろいろあります。次回はまた別のレシピとともに、芳香蒸留水の成分について書きたいと思います。